2~3ヶ月に一度腰痛などでやって来るKさん。やせていて背部痛、腰痛、食欲不振、腹部のもたれを訴え
診る度に体力も落ち、悪くなっているようで、1年以上前から本人には
「何か良くない病気があると良くないので大きな病院で受診して下さい」
「・・忙しくって、時間も無く・・・私はそんなに悪いのですか?」
すい臓がんには特有の症状がほとんどなく・・ついに業を煮やした私は言ってしまった。
「いや、悪いと困るでしょう・・・膵癌などは分りにくいし」
それでもなお・・忙しさにかまけて放置・・・ところがある日、青い顔で急に来院
「先生先週から便が白っぽくなって・・段々ひどくなって来ます。何でしょうか? 腰も痛くて寝れません。」
いよいよか・・・・
「熱は無いですか?ゲリは? 便にプツプツと油のようなものは混ざってませんか?」
「下痢気味ですけど・・・」
「こっちを向いて下さい」
目を見るが、まだ黄疸は無い。発熱も無い事から急性の胆嚢炎や膵炎では無さそうだが・・
可能性として胆石では便が白なら多分・・黄疸もあり痛みも可なり強いはず。
胆道ディスキネージなど胆道周辺の閉塞かもしれないが痛みが無い・・・やはり・・・
「Kさん病院で受診はまだですか? 今治療はしますが・・・軽い膵炎位ならハリで治りますが・・」
Kさんはハリが大嫌いなのだ・・・
「ちょっと我慢をして下さい」
「ちょとまって・・覚悟が・・・・うう・」
「ああ良かった。可なり楽になりました。」
「Kさん必ず病院で受診して下さい。」
2回の治療で白い便が治ったKさん病院で受診しようとはしない・・・後日来院の奥さんに良く話をして・・
「先生検査はしましたが・・何とも無かったです」
「何の検査ですか?」
「エコーと採血・・・」
「たったそれだけですか?白い便の事や痩せて来て、お腹のもたれ、背部の痛みのことは言ったのですか?」
「今はなんとも無かったので・・」
「私はそれだけの検査では足りないと思います。膵臓癌の可能性は捨ててはいません。用心して下さい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
皆自分だけは病気にならないと信じたい気持ちは分るのだが
心配しなくて良い人は異常に心配し、本当に心配な人は気にしない・・それとも恐怖で認めたくないのかも