1ヶ月ちょっと前から時々腰痛と足の痛みで来院の僧職Kさん常に軽い咳が初回から継続している。
聞くと・・・可なり以前かららしい。風邪の咳とも違う、喘息やアレルギー性でもない・・・・
暫く様子を見ても、変化が無いので・・・咳の鍼をしてみる事3回普通なら治っても良さそうな筈だが、効果が少ない。
初期のギックリ腰はすぐ治ったものの、足も少し治りが悪い・・・この様な時は良くない病気が隠れている事も多い
若い頃屋根から落ち首を痛めたまま・・との事。確かに頚椎7番辺りが悪いと咳は出易い。しかし・・それとも・・
「Kさんこの咳は少し変です。大きな病院で検査を受けてみませんか。」
「イヤ・・私は声を出す職業だからハハハ・・・」
10年前に検査をすすめて、6~7年間も必ず毎月T大学付属の呼吸器科で受診されていたNさん3年前にようやく肺癌が見つかり・・
その時はすでに5センチ。かなり大きく成長(担当医の顔が見てみたい・・指導医も一緒に )・・即、切除はしたが、可なり転移が心配だ。
せめてもの救い?は高齢であり、そして女性は肺がんの生存率が何故か比較的に良いといった根拠の無い望みのみ・・・・
夫婦そろって癌になり・・・数日前ご主人を見送る事に・・どんな気持ちだったろうか・・・・
他にも検診を何回も勧め何年間も放っておいた、故(Tさん)ついには家族に連絡をして検査をしてもらうが
すでに末期で治療の仕様は無く・・・・担当医は・・
「ハリで楽に、なるなら・・・ハリの先生に治療をしてもらって下さい。」
確かにハリは麻薬が効かない呼吸の苦しみも、いくらか楽になる。だが・・・・
くり返し奥さんにも“悪性腫瘍ですから受診して下さい。”と言った筈だが・・・
多くの苦しみを越え亡くなった時・・・「癌なら癌と言って欲しかったです」
いまさら何と言うことを・・・私の話は何だったのだろう・・・・しかし最後の医師の言葉は
「なぜ今まで生きられたか分りません。数年前に無くなっていた筈です。不思議なことです。」
「先生、私は満足です。苦しいと言うことも無く・・こんなに長く生きていました。本当にハリのお陰でした。」
それが意思も通じず・・たいした事も出来なかった・・・私の唯一の救いだった。
何も出来ないなんて・・・人の死にめぐり合う機会の多い仕事ではある。だが、もうこんな思いはしたくない。
治療法が無いからこそ、やはり検査が必要なときもある。