子どもの動脈硬化と高コレステロール血症
フラミンガム心臓研究で,日本は心筋梗塞のない国と記載されました.だが現在の日本では,心血管疾患死亡率は死因の第2位になっています.
日本人のカリフォルニア移民と日本在住者を調べた研究では,本国日本人と比較して,日系アメリカ人で著明に高い総コレステロール・LDL-コレステロール・トリアシルグリセロール濃度が示されています.
これらは食餌摂取量で推測される白人の値よりも高値を示したのです.このことから日本人は動物脂肪によわいのではないかと推測されています.日本の小児でもこれがあてはまり,血中のコレステロール値は期待値よりも高く,米国の小児を上回るようになっています.ほとんどすべての日本の小児に動脈硬化性病変があることは先に触れました.
かつての日本食は低脂肪低動物蛋白高線維で,このような食餌はコレステロールレベルの低下と相関し,腸内細菌は発酵性で成人病や大腸癌を予防すると思われます.
動物園のゴリラは与えられる飼料でコレステロール値が上昇し,乳製品・肉・卵が与えられると,早発性の心血管疾患に罹患します.
日本人は人類本来の良い腸内細菌と良い腸相を持っていました.不幸なことは,科学が白人優位の立場で支配されており,前提に乳製品や肉を食べるということがあります.
初潮年齢の早期化(早熟)
自治医科大学香川靖雄教授の研究では,1946年以降年ごとに,6,100の家庭から20,000人の人が面接され,彼らの食餌,体重,身長,他の因子,癌発症率と成熟期(女児の月経の発来で測定される)などが,慎重に分析されました.
1950年の乳製品の1人当たりの年間摂取量は,5.5ポンド(2491.5g)だけであったのに,25年後には,平均的日本人は牛乳・乳製品を年間117.4ポンド(53182.2g)食べたそうです.
それに伴って体重と身長が増加し,初潮年齢は1950年の15.2歳から1975年の12.2歳まで早期化しました.子どもが早熟になったのです.
ただ同時代に中国では,日本と同等の身長と体重の増加が菜食中心の食餌で得られています.菜食は早熟(初潮年齢の早期化)が起こりにくいと報告されており,早熟(初潮年齢の低年齢化)は乳癌の危険因子ですから,有害な乳製品を摂ってはいけないと思われます.
アレルギー・広汎性発達障害・不登校や慢性疲労
乳製品はその成分がアレルギーを起こす最も多い原因のひとつであり,乳製品のカゼインという蛋白成分は,広汎性発達障害をひき起こし,慢性疲労も乳製品や他の食品の除去で改善します.
腸内細菌の異常はアレルギーと関係があります.フィンランド・トゥルク大学小児科のKalliomakiは,「アレルギー性疾患の乳児と,後にアレルギーが出てくる乳児では,腸内細菌叢の変化が先行して見られ,腸内細菌叢のビフィドバクテリウムとラクトバシラスの発達の遅延が,この一般的な所見である」と腸内細菌とアレルギーの関係を示しています.
また腸内細菌がよくないと,過敏性腸症候群,炎症性大腸疾患,大腸癌と胃腸炎を含む多くの状況が生じます.たとえば高等な類人猿に低線維食(西欧食)を与えると,潰瘍性大腸炎になります。
これは線維の発酵により生じる,大腸の好ましいエネルギーになる短鎖脂肪酸(酪酸塩など)が少ないことと,これらの大腸粘膜保護作用がなくなるためと思われます
ロンドン大学医科大学精神医学教室のブロストフ(Brostoff)は過敏性腸症候群の総論について論評しています.
「(精神科領域では,食餌因子は多くは重要視されず無視されているが)今や文献的には,食物の除去が約50%の患者で症候を緩解するという考え方を支持している.興味あることは,そのような患者で食物を除去すると神経質を示す軽度な症候が消失する」と.