2003年10月13日
「お願いいます。○○さんに聞いたんですけど、頭の病気は治るんですか?」
薬の副作用だろうか、ぼんやりとして見える。母と娘さんかな?
「どんな症状で、いつ頃からですか?」
「1年半ほど前からで、お産の後から変なことを言う様になったんです。薬を飲んでも変わらず、今は実家にいます。」
「やってみないと判りませんが、大分時間が経っていますね。いまは肩が凝っていますか?」
精神症状の初期は大抵、風邪のように肩から背中が強く凝るのだ。
「いいえ。凝っていません。」
神経回路が確定してしまったのだろう。
「だめかも知れません。初期は良く効くんですが、こじれると治り難くなります。ひどくなると、薬で抑える治療が中心になります。」
しかし家族の強い希望で2~3回試すことになった。うまく行けば良いのだが?
1診目
「どうですか、何か具合の悪いところは、有りますか?」
「別になんとも有りません。」
確かに。今は強い大量の薬で、とりあえず安定しているし、なにも感じないので当然だろう。
「普段はどんな感じなんですか?」
「スーパーの買い物中に、野菜など、よく踊っていますよねえ。」
「そうなんですか?そう見えるのですか?」
幻覚は薬物によることが多いのだが・・・
「だって、野菜は踊りますよ。」
キッパリ、当然。・・・
「他にはどのような?」
「家族は、そんなことは無いと言うのですが・・・」
「何でしょうか?何でも言ってください。」
「ダッテ、テレビって見てると、あなたの子供は、将来こうなります。とか言いますよねえ。」
やはり当然。・・・
「そうですか。僕はあまりその番組は見ていないのですが、何曜日の何時頃ですか?」
「あら、しょちゅうやってますよ。」
「どの局で?」
「いろんな局ですよ。先生知らないんですか?」
「ん~。今度よく見てみます。」
2診目
「前回の治療で何か変化は有りましたか?」
「私は何処もなんとも無いのに、何の治療をするのですか?」
どうしよう?
「赤ちゃんもズ~ト見てないし、明日嫁ぎ先に帰ります。」
「家事は大丈夫ですか?」
「・・・おばあちゃんがします。」
「では帰ります。」
チョット!! ・・・そんなで、どうするの?
「では今日の治療はどうしますか?」
「さようなら。」
その後は見ていない。
同じ病気になった私の、前職の弟子がいる。今の私なら、少しは力になれるだろう。多分?あの時は初期だった。あの時、何の助けにもなれなかった自分が腹立たしい。